社長エッセイ

ターニングポイント

 この巻頭言、いつ頃から書いているのだろうと遡ってみると、2003年2月からでした。「本質を追求できる組織を目指して」というテーマが始まりなんですね。約60回、14年以上にわたりずいぶんと長いこと書いてきたなあと思います。それに、なんだか最近よく聞くテーマですよね。10年以上経っても目指していること、言っていることは同じ、ということなんです。これって「ブレてない」という意味では大変すばらしいこと、貴重なことなのですが、一方では「マンネリで面白みに欠ける」、ともいえそうです。
 さて、この巻頭言、いつも筆が遅くて編集長泣かせです。発行が遅れる原因はひとえにこの巻頭言にあります(ね?)。それでもこれまでは、遅くなっても、都度、書きたいテーマだけは必ず浮かんでいたものです。でも今回だけはなかなかパッと浮かんでこないんですね。だから、この巻頭言、少し筆をおいてみることにしました。
 といって、巻頭言がなくなるのはつまらないですよね?そうなると、やっぱり代わりは部長です。いきなり振りますが、次回からは部長に書いてもらうことにしましょう。私の楽しみも一つ増えることになりますし。そして私は、いってみれば、「サザンオールスターズみたいに充電をする」?いや、仕事は続けるのでそんなこともないか。ともかく書くことはしばらく休むことにしました。
 さて、テーマが浮かんでこない、と書きましたが、実は「ターニングポイント」というテーマで書こうかなと思ってはいたのです。どうしようか迷っていたのですが、せっかくなので思っていることそのまま書いてみます。
 私の頭の中では、KMCは成長を続け、やがてはトップギア入りし、高速道路を疾走して、そしてそのうちスピードが落ち着いてくる。その時に第2ステージの幕があがり、KMCは新たな形で展開していく、はずでした。ところが最近、まだまだサードギアのまま、どうも失速が始まっているかもしれない、どこかガス漏れしているのか、ガス欠になりつつあるのかもしれない。気のせいかもしれないが、そんな肌感覚に近いものを感じるんですね。きっとそれは私だけが感じること、感じることができるものなのだろうとは思います。もっと新しい視点でKMCのこれからの成長を考えなければならない。だから、「ターニングポイント」。
 でもこんなこと書くと、皆さんのテンションが下がりかねませんよね。こんなに忙しいのに、ガス欠だって…..?だから書こうかどうしようか迷っていたのです。私の気のせいかもしれませんし。
 ただ見方を少し変えれば、KMCがさらに大きな飛躍をするための壁にぶつかっている、ともいえるのです。組織が急に大きく成長して、いまは少しその反動が来ている。いわゆる「踊り場」です。3年間ほど「たまたま」大きな売上をあげたけど、それをどうやって継続させ、伸ばしていったらよいのかが良くわからない。人数が増えるに伴い、きちんとコミュニケーション取るのが本当に大変になってきて、会議もすごく多い。ほぼ一日中会議をやっていることも結構あって、それに相当な時間を取られる。メールもしかり。気が付くと一日中メールを書いていたりする。何か決まり事を作っても、それを全社的に浸透させるために、結構なエネルギーとコストを使う。そして昨今、やれコンプライアンスとか、個人保護法とか、情報漏洩とか、本業とは離れたところで、これまでとは比べ物にならないくらい気を使わなければならないことが多くなってきた。
 要は、今は、そんな混とんとした状況から抜け出すための「試練の時」だといってよいのかもしれません。これを抜け出せた企業だけが成長する。本来、企業の成長とはそういうものなのだ。エネルギーとか、時間とか、コストとか、そうしたものすべてを前進力として使っていくようにすることだ。そうやって考えると、がぜんやる気が湧いてきます。単純なんですね、経営者というのは。20周年に向けた目標はすでに皆さんと共有しました。それに向かって、もしかすると今のKMCのあり方を少しずつ変化させながら、一段上を目指していければと思います。