社長エッセイ

【部長シリーズ第3回】国際ビジネス支援部:KMC羅針盤

20年ほど前、ピーター・ドラッカーの”Management Challenges for the 21st Century” という本を読み、ナレッジワーカー(知識労働者)という概念に感銘を受け、これが21世紀の社会であり、自分の目指していきたい働き方だ、と思ったことがあります。これまでの工業化発展モデルのもとでの「労働者」の概念から、21世紀の先進国では、知識が付加価値を生み出す社会となり、知的生産物を創造する労働者、ナレッジワーカーが活躍する世界になる、というものです。
この本によると、ナレッジワーカーとは、次のような特徴を持った仕事人です。
・ナレッジワーカーの成果は働いた時間ではなく、質で決まる。
・彼らは特定の組織への帰属意識よりも、知識労働者としての成長や活躍の場を重視する。
・彼らは業務によっては協力して仕事をするが、基本的には単独で仕事をすることを好む。
・彼らは誰のためにどのような目的で働くかが大事で、クライアントを大切にする。
・彼らは、問題解決型のチャレンジングな業務、創造的な仕事を好む。
・彼らのモチベーションの源泉は達成感にある。
・彼らには「知的創造をするためのスペース」が必要で、ここへの侵入者をあまり好まない。
・彼らは独特の知的活動サイクルをもち、機械のように簡単に「オン」、「オフ」が出来ない。
・他人から重要な仕事をしていると評価されたい。
・彼らは給料、肩書に関するモチベーションは高くないが、良い給料をもらっている。
・彼らの最大のモチベーションは業務や仕事そのものにある。
このようなナレッジワーカーとして仕事ができそうなKMCに入社させていただき、早12年となりました。振り返ると、KMCはまさにナレッジワーカーとして働くために必要な厳しさと自由さを併せ持った環境にありました。そして、さらには、ともすると個人主義に陥りがちなナレッジワーカーの集まりが組織として成果を出せるよう、社員皆で創意工夫をしながらKMC独自のナレッジマネジメントの仕組みを積み上げてきており、学ぶことの多い職場です。

そして最近、私達はKMCのブランディングを進めています。
Brand Identity
KMCブランドアイデンティティ
皆で決めたブランド・アイデンティティだけあって、「本質の追求(幸福の提供、ぶれない)」、「途上国開発のプロフェショナル(成果、変革者)」、「共に歩むパートナー(チームワーク、同じ目線)」はKMCがクライアントに提供できるKMCならではの価値だと思います。今後も引き続き、私たちのウェブサイト、会社パンフレット、毎日のコンサルティング業務、報告書、顧客との対話、メール連絡など、クライアントとの接点となる各種「タッチポイント」でこれらKMCらしい価値観をアピールするとともに、クライアントにこの価値を「体験」していただけるよう工夫する、というのが最初のステップかと思います。ただ、タッチポイントは色々ありますが、結局はナレッジワーカーの集まりを基本としている私達の最大のタッチポイントは私達自身、ということになる気がします。
私たち一人ひとりが、これらKMCのブランド・アイデンティティをクライアントとの各種接点で示し、クライアントが「KMCは確かに途上国開発のプロ集団だ」、「常にぶれずに途上国裨益者の幸福を追求している」、あるいは「KMCコンサルタントとは一緒に仕事しやすいな~」と思っていただける瞬間をできる限り多く作っていく、ということかと思います。

ところで、優れたブランドには際立った個性があり、ブランドパーソナリティ(人格)を持っているそうです。人間というのは多くの場合、感情移入をして、製品・サービスを選ぶそうですが、ブランドにもパーソナリティがあると人は感情移入しやすく絆が生まれるそうです。例えばハーレーダビッドソンは「男らしさ」、「野性的」、「独立心」、「自由」といったパーソナリティを前面に出し、このような人格を目指す人が愛好しています。KMCの場合は、例えば、「知性」と「人間的な温かさ」と「品格」と「誠実さ」と「革新的」といったところでしょうか。あるいは、皆で議論するともっと個性的なKMCのブランドパーソナリティが出てくるかもしれません。

いずれにしましても、私達が自分の日常業務の中でKMCブランドを常に意識し、クライアントに対して具現化していくためには、私達自身の中で自分の目指す働き方や成果のイメージとKMCのブランド・アイデンティティが繋がっているのが望ましいと思います。

自分に立ち返り、昔思い描いた理想の働き方のイメージとKMCブランディングを比べてみますと、「途上国開発のプロフェショナル」と「本質の追求」は、まさに開発コンサルタント(ナレッジワーカー)として成果を発揮すべき核心部分かと思っています。一方、「共に歩むパートナー」については、欧米的で個人主義的なナレッジワーカーどうしがどのようにして組織的な力を生み出すか、という課題に取り組むこと、と自分では捉えています。この点はピーター・ドラッカーの21世紀の挑戦ではまだはっきりと思い描けていない部分だったかもしれません。ナレッジワーカーを目指せば目指すほど成果主義・個人主義に陥り易いところを、和と輪で、ナレッジワーカーどうしが協力し組織力を高めていく、この適度なバランスを模索する、というのは、多分非常に斬新的な試みだと思っています。
会社が目指すところと実際に自分が提供できる能力との間に差があるのは歯がゆいですが、まずは会社が目指すところのイメージを自分の中に落とし込むことが最初のステップだと自分で納得させています。皆さんも、自分が個人として目指したいことと、KMCのブランド・アイデンティティを重ね合わせ、自分らしさを加味したクライアントへのKMCブランドの提供を考えてみては如何でしょうか。