社長エッセイ

どんな自分になりたいですか?

 私の好きなことわざに「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」というのがあります。「大きな蟹は大きいなりに、小さな蟹は小さいなりに、自分のサイズにピタッと合う穴を掘って、そこに身を置く」ということです。これ、私の理解するところは、「人それぞれにキャパシティーの違いがあるが、キャパティシティーが大きな人も小さな人も、それに見合った仕事をする」ということです。これはちょっとシニカルに言い換えれば「人は所詮その人の持つキャパシティーの範囲でしか仕事はできない」ということでしょうし、だからこそ「人は、甲羅のサイズを大きくしようと努力するし、努力によって大きくできる」ということだと思います。

 人は誰でも、調子の良いとき悪いときがありますね。それは長い時間の中で徐々に変わることもあるでしょうし、極端には一日の中でも変化したり、ある物事やある人物がきっかけで良くなったり悪くなったりと、こうしたことはみんなが経験していることではないでしょうか。私自身、ちょっと忙しかったりストレスがたまったりしていて、他人やその人の仕事ぶりを感情的にとらえたり、ネガティブに考えたりすることがありますし、その逆に、結構難しい局面だったけどうまく乗り越えたな、冷静に対処できたなと、後で振り返って感じることもあります。これは、甲羅というものが、自分のコントロールが利かないところでも大きくも小さくもなるということだと思います。それならば、できる限りそれをコントロールできるようになること、つまり意識して甲羅のサイズを大きく保つことができるようになることが、私を含め特に「人づくり」を標榜するKMCの社員の大きな課題の一つであることは間違いありません。

 我々の周りにも、淡々とすごいことをやってのける人、とても自分には真似できないほど大きな甲羅を持った人がいるかと思えば、自分中心にしか物事を考えられない人、一つのことだけにこだわる人、感情が抑えられない人もよく見かけますね。あるいは、本人はどうやら大きな甲羅を持っていると思っている様子だけど、他人が見るととても貧弱だったり。自分には自分の甲羅が見えないということなんでしょうね、これは。結局、その人間の甲羅サイズがどのくらいの大きさなのかによって、考え方や行動パターンが大きく左右されるのでしょうし、結局はそうした行動が最終的にうまくいくかどうかを規定する大きな要因になるのだと思います。

 先日読んだ本で、こんなことが書いてありました。「人は自分がそうなりたいと思う以上にはなれない…」とても含蓄のある言葉ですね。さて皆さんは今、どんな自分になりたいと想っていますか?