社長エッセイ

48位!?

 皆さんご承知のとおり、コンサルタント企業のJICA契約実績で昨年度KMCは48位ということでした(国際開発ジャーナル誌)。JICAに登録しているコンサルタント社数は746社、そのうち役務や業務実施などJICAと実際に契約を結んだのは273社ということです。つまりこの業界、大小合わせてせいぜい約300社弱で動かしているんですね。その中での順位ということです。

 これまでのデータからすれば、企業名が公表される50位以内は確実と思ってはいたのですが、今回はJICAとJBIC合わせての契約実績にしたということで例年より額の底上げがあり、その結果ぎりぎり50社以内に入ったようです。この順位をどうみるか、それぞれの立場で見方も関心の高さも違うとは思いますが、少なくとも私の中では、会社の名前がようやく出るようになって良かったなあという気持ちと、随分時間がかかったなあというため息にも似た気持ちと、まだまだだなあという前向きな気持ちが混在しています――そこで、これからのKMCはどうあるべきなのか、この機会に改めて考えてみました。

 もっとも大切なこと、これは会社の売り上げには関わらずずっと変わらないでしょう。コンサルタントはあくまでクライアントがあって成り立つビジネス。それならば「顧客満足」を社是の一つとするのは当り前のことです。私たちにとっての顧客とは、お金を出してくれるクライアントだけではなく、途上国の最終受益者も含まれるということを常に忘れてはならないですね。でも、実際にはまだまだのように感じます。残念ながら、時々、自分の考えだけで仕事をしている社員がいるように私には映ります。顧客が私たちに期待していることをあまり考えず、自分の考えややり方の押し付けになっている。これでは顧客満足は期待できない。

 といっても、これは何も顧客の言いなりになれ、といっているのではない。おかしいと思うことはどんどん議論すればよいし、クライアントだからと媚びへつらう必要などまったくない。ODAという公共事業の性格から、やる気の感じられない、あるいは高圧的な担当者や身勝手な途上国の人々と仕事をする時もありますが、そんな時はこちらも盛り上がりませんよね。つまり「やりがい」を感じない。そんな時は、私たちは彼らをどう動かすべきなのかも考える必要がある。それは実はコンサルタントにできる、しなくてはならない大切な仕事だと思っています。だから議論はすればよい。顧客とコンサルタントは同じ船に乗って仕事をしない限り良い成果は出せないと思っています。だから時にはぶつかり合うのも必要。でも、最終的には彼らが私たちの仕事に満足する、私たちも彼らの変化や仕事の結果に満足する。これが大切だと考えます。「いろいろあったけど、この仕事やってもらって良かった」最後にそう言ってもらえればコンサルタント冥利に尽きるのではないでしょうか。

 契約実績に戻りますが、リストを見ると下位の方は額もあまり変わらず、ほとんどどんぐりの背比べですね。せめてこのどんぐり集団からは抜け出したいというのがまずは目標です。私たちはODA業務だけを志向しているわけではないので、現在の各社の売上ベースでみれば20社以内に入れば良し。加えて、コンサルタント集団という性格からは、会社の規模をあまりに大きくすることは私の本意ではない。だから20社以内に入れば十分。それを目標にしましょう。それ以上は売上額を積み上げるということではなく、もっと違うことを目指していきたいというのが私の考えです。

 それはKMCという会社の存在意義にも関わることだろうと思います。なぜKMCがあるのか。それは途上国の人々の自立をほんとうに支援できる存在、そうした意識や能力を持った人々が集まっている集団、という「存在感」だと考えています。だから会社として社員としてそのために必要な仕事をし、お互いにそのために必要な切磋琢磨をする。その結果としてさらに力がついてくる。組織の中では自分の役割が分かっているので、あれこれ言われなくとも個々の社員が自ら動ける。だから組織もスムーズに回転する。これで周りからの「信頼感」を得ることができる。こうした「存在感」と「信頼感」で仕事が一つ一つつながっていく、その結果として利益がきちんと出ている-そんな意識を共有できる、責任感のある、いわば「大人の社員」がそろっている。それが目指すKMCの姿です。

 我々先進国は戦後60年間援助をしてきましたが、途上国の状況は決して良くなってはいない。だからこれまでのやり方を否定して考えなければならない。これまでの教訓からここをこう変えて…なんて小手先で済む話でないんですね、もうここまでくると。でも実際には、ODA業界では流行語のようにその時々で使う言葉を変えてはいますが、実態としては変わり映えがしない。「成果」重視ではないから、過去の反省を十分にせず、目先だけを変えて終わっているんですね。しかも目新しさを狙うがゆえに、必要不可欠なことを省いてしまったりしている。公共事業という官でしかできないことはたくさんあるが、それがすべてではないし限界も多い。特に「利益」というコンセプトがはいってくると、もともとそうした意識がない公共事業ゆえに、いきなりおかしな方向に行く。

 でも途上国の政府や人々にとって欲しいのは、結局「利益」ではないでしょうか。だからここを軸にして考えなければならない。そしてコンサルタントとしては、せっかくプロフェッショナルとして能力を磨いてきている存在であるにも関わらず、「民」であるためにODA事業への関わりが制限され、そして中途半端なことが多い。うまく役立ててもらっていない。そのためにODA専門家が圧倒的に不足している。だから公共事業だけではうまくいかない。つまりそういうことだと思います。

 そのため、私たち「民」に何ができるのか、何をすべきなのか、もっと「クリエイティブ」に考え実行しなくてはならないと考えています。個々の社員のクリエイティブさがもっと前面に出てくるような会社でありたい。それがKMCという会社を通じて目指していることです。具体的には、今、自分でやっていることがほんとうに途上国の人々のために役立つのか、顧客満足に結びついているのか、やり方を変えればもっと良くならないのか、それはどんなやり方なのかを常に考える。こうした問題意識を持っていることが必要、ということです。

 もちろん、問題を問題だ、と騒ぐだけじゃない。理想論だけ語るのは、私たちのようなプラクティショナーにとってはほとんど意味がない。問題が本当に改善され得るのか、それならまず自分自身は何をするのか、そこまで考えなければならない。人任せではなく自分で動く。そんなことを自由に議論しながら、色々なことをクリエイティブに手掛けている会社、それぞれの担当者が責任感を持って考え実行している会社、人のせいにせずどんな状況でも必ず自分の役割を果たすプロ意識の高い会社、成果に対して周囲の評価も高くだから仕事がつながっている会社、その結果しっかり利益を出していて社員の給与水準も高い会社、そして総合的には途上国の発展に役立っていると社会から思ってもらえる会社――KMCがこうした組織になれるよう、是非これからもますます意識し実践していきたいと考えています。